2026/09/27

会社には、請求書や領収書、税金や社会保険の通知、契約書、各種の案内など、さまざまな紙の書類が届きます。中身を確認し、必要な人に回し、あとで探せるように保管するところまでが日々の仕事になります。

私たちの会社では、スキャンした書類をAIで読み取り、Microsoft 365のSharePointへ整理する仕組みを社内で使っています。差出人、書類の種類、日付、期限、金額などを取り出し、書類を開くためのリンクとともに担当者へ知らせます。

目的は、届いた書類に気づき、必要なものを探しやすくすることです。支払いや返信などの対応を決めるときは、読み取られた項目だけでなく、元の書類を確認します。

スキャンした後の整理を自動にする

基本的な流れは次のとおりです。

  1. 届いた紙の書類を、複合機やスキャナでPDFにします。
  2. PDFから文字を読み取り、本文を検索に使える形にします。
  3. AIが本文から、差出人、書類の種類、日付、期限、金額などを取り出します。
  4. PDFをSharePointに保存し、取り出した項目を一覧の列に書き込みます。
  5. 新しく処理した書類について、要点と書類へのリンクを担当者へ通知します。

この仕組みで減らしたいのは、書類ごとにファイル名を考えたり、一覧表に同じ情報を転記したりする作業です。内容の確認、読み違いの修正、支払いや手続きそのものは、別の工程として扱います。

ファイル名に詰め込まず、列で探す

SharePointでは、ファイルごとに情報を持たせる列を作れます。私たちの仕組みでは、差出人や書類の種類などを列に入れ、対応状況も管理しています。

列に分けると、期限の近いものを並べたり、差出人で絞り込んだりできます。対応が終わった書類の状況を変えれば、未対応の書類と分けて見られます。

ただし、一覧が役立つためには、列に入る値がそろっている必要があります。AIが返す分類名と、SharePoint側で定めた選択肢が違えば、思ったとおりに絞り込めない可能性があります。「未対応」という表示が付いていても、本当に対応が必要かどうかは書類を見なければ分かりません。

一覧は、書類を確認する入口として使います。分類や状況だけを見て、支払いや手続きの要否まで決める使い方はしません。

読み取り、分類、対応の判断を分ける

書類を文字にするOCRと、その文字から意味を整理するAIの処理は、違う工程です。文字が読めていても、書類の意味や期限の解釈を取り違えることがあります。

元の書類に書かれた日付と、書類に対する対応期限も、同じとは限りません。金額には請求額、既に支払った額、参考額などの違いがあります。項目が埋まっていることだけで、正しく読み取れたとは判断できません。

そのため、通知には元の書類を開くリンクを付けています。支払いや返信などに進む前に、画像と読み取った内容を照らし合わせられるようにするためです。AIには書かれていないことを推測で補わせず、不明な項目を不明なまま扱うことも必要です。

処理した件数まで確認する

自動で動く仕組みでは、エラーが出なかったことだけでは、届いた書類が整理されたかどうかを判断できません。処理対象を選ぶ条件が合わなくなれば、書類が届いていても処理件数がゼロになることがあります。

運用を考えるときは、書類を受け取った件数、読み取った件数、SharePointへ登録した件数を分けて記録する必要があります。届いたのに処理されていないものや、途中で止まったものを見つけるためです。

また、過去の書類をまとめて処理し直す場合は、新着と同じ通知を大量に送らない配慮が要ります。その場合には、通知を止めた分を誰がどう確認するかも決めます。通知が届いたかどうかだけに、書類の確認を頼らない運用が必要です。

費用は処理全体で考える

文字の読み取りには、国立国会図書館が公開しているNDLOCR-Liteを使っています。NDLOCR-LiteはGPUを必要とせず、一般的なコンピューターでの利用を想定したOCRです。国立国会図書館・NDLOCR-Liteの公開について

自社の機器でOCRを動かす場合、クラウドOCRのようなページごとの利用料は発生しませんが、機器の費用、電気代、更新や障害対応の手間はかかります。AIによる分類には別のサービスを使うため、その利用料も必要です。

比較するときは、OCRとAIだけでなく、保存場所、通知、保守、人が確認する時間まで分けて見積もります。この記事では、請求実績と処理件数を対応させた費用測定を示していないため、1件あたりの費用や削減率は挙げていません。

既に使っているMicrosoft 365の契約や社内の機器を活用できるかによっても、追加費用は変わります。まず書類の種類と量を数え、必要な構成で見積もる方が判断しやすくなります。

紙の原本をどう保管するかは別に決める

書類を探しやすくする仕組みと、紙に代えて電子データを保存するための要件は、分けて確認します。

国税関係書類の紙をスキャンしたデータで保存する場合には、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件があります。SharePointにPDFを入れ、日付や金額を検索できるようにしただけで、すべての要件を満たすとは言えません。対象書類に適用される要件と運用を確認してから、紙の扱いを決める必要があります。国税庁・電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】

ここで紹介した仕組みは、書類の整理と通知についての事例です。法令上の保存要件への適合を保証するものではありません。

始める前に決めておくこと

導入を考えるときは、まず1か月分などの範囲で、届く書類を確認すると進めやすくなります。

  • どんな書類が、どれくらい届くか。
  • 誰がスキャンし、誰が通知を見て対応するか。
  • 一覧には何の項目があれば探しやすいか。
  • AIへ送ってよい情報の範囲はどこまでか。
  • 読み違いや処理漏れを、誰がどう確認するか。
  • 紙の原本をどこで、どのように保管するか。

すべての書類を一度に扱う必要はありません。対象を絞り、実際の書類で読み取りと分類を試し、人が確認する手順まで含めて決めていきます。

株式会社ビギニングでは、こうした社内業務の仕組みを、自分たちの業務で使いながら改善しています。書類の整理を自動にしたい、複合機とMicrosoft 365をつなげたいといったご相談は、お問い合わせフォームからお寄せください。

初期のOCR連携の技術構成は、複合機スキャンからOCR・ファイル整理を自動化した記事で紹介しています。現在の仕組みとは、OCRの実行方法や分類・通知の工程が異なります。